ブックタイトル月刊田中けん

ページ
40/58

このページは 月刊田中けん の電子ブックに掲載されている40ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

月刊田中けん

やはり1番強く取り調べの可視化に抵抗しているのは警察。警察関係者がいう組織犯罪や性的犯罪の二つの大きな犯罪をもって、全ての犯罪を取り締まる基準とするのはおかしい。確かにこの様な犯罪については、真剣に考えなくてはいけないのだが、だからと言って、全事件を録音・録画する弊害があるという理由にはならない。あと警察の方がよく言うのは、「物理的に全事件を録音・録画するのは無理だ」。そのような取調室を用意して、機材や人材を用意することはできない。だから私は裁判員裁判事件から録音・録画をする。ここだけは始めてくださいよといいます。そして近い将来、体制が整ったら全事件の録音・録画をすればいいと。警察としては、録音・録画を認めてしまっては、今まで自分たちが行ってきた取り調べのマニュアルが全く使えなくなる。全く新しい取り調べの方法を考えなければいけない大変さを嫌がっている。昨今の冤罪事件などを受けて、警察は自分たちの取り調べのやり方に問題があると、批判的に考えているのではなかろうかと思っていたわけですが、この会で話す限りでは、警察は全く反省していません。これがよくわかった。録音・録画しても、良いことなど一つも無いという警察関係者もいた。それならば最後まで反対しろよと、私はいいたい。それなのに、こことここは録画してとか、一部録画に好意的なことを言い始めているのです。これは、反省はしていなくても、自分たちの捜査のあり方に批判が集中している事実があることを知っているからだと思う。警察はもっと真摯に自分たちの取り調べのあり方について検証してほしいと思う。パソコン遠隔操作事件において二人の方が、嘘の自白をして動機まで調書に書かされたということがありましたが、あれについて警察関係者の言い分は、「嘘の自白に騙されてしまった。(会場から笑い)嘘の自白に騙されないような捜査をしなければいけない。嘘の自白を見抜けるようにしなければいけない」と反省している。その発言を聞いたときには、やはりこの人達は、「自分たちの捜査に間違いは無い」と言い続ける人たちだと知って、愕然としました。既に可視化を実施している外国もあるわけですが、これについて警察関係者の言い分は、「どうして世界で1番治安が良い日本が、治安の悪い諸外国の取り調べを見習わなければいけないのか」とおっしゃっています。学者の中には、日本と外国では法制度自体が違うのだから、一概に日本と比べるわけにはいかない。日本の実情に合った形で考えるべきとの意見もある。取り調べの可視化の対象は、何も被疑者だけではない。参考人の時も本来、可視化すべきです。これは警察が言っていることなのですが、参考人と言っても、レベルがあります。(右上に続く)現場での聞き込みや、ドア越しに話を聞いたりすることもあります。そこまで録音・録画するのかと言い出すわけです。私が意見書の中で具体的に書かせてもらったのは、“二号書面”という参考人の供述を公判において証拠として採用する可能性がある書類については、その取り調べの過程の任意性をハッキリさせるためにも、録音・録画は必要と書きました。あともう一つ僕が危惧しているのは、被疑者だけの録音・録画が義務づけられたとしたら、「逮捕する前に調べてしまえ」ということになります。今でも行われていますが、参考人で警察まで引っ張ってきて、ガンガン攻めておいて、目処が立ったところで逮捕して、そこから調べるということが一般化しないだろうかということです。被疑者で録音・録画をしなければいけないのならば、参考人で引っ張ってくればいいと警察が考えるようになると予想されます。だからこそ、参考人の段階から、取り調べの録音・録画はすべきだと考えています。「マイクとカメラを突きつけたら、誰が本当のことを言いますか」と警察は言いますが、このような発言が出ること自体、警察は録音・録画に消極的だと言うことがわかります。今後、取調室では録音・録画が当たり前になれば、少なくとも被疑者は「そんなものか」と理解して、普通に話せると思います。ドキュメンタリーを撮ったりするとわかるのですが、撮られている側は、最初こそカメラを意識しますが、その内に撮られていること自体を忘れたりするのですね。人間って、その場に慣れるわけです。警察にとっては、被疑者が話しにくくなるのではなく、自分たちが話しにくくなるから反対していると思います。警察の本音を翻訳して言えば、「誰がカメラの前で、取り調べなんかできるのですか。そのような中で取り調べたくない」という警察の都合優先なんですね。今の問題は取り調べの録音・録画なのですが、実際の録音・録画では、カメラのポジションなども問題になってくるわけです。香港での取り調べの画像を見たのですが、だいたいは取調官の後から撮って、被疑者の顔のアップが写っていました。なぜ取調官の顔に向いているカメラは無いのか。それがあって始めて、取調室の状況が公平に録音・録画されていることになるのだろうと思います。ですから、この先の問題としては、録音・録画が実施されるようになれば、そのカメラポジションについても検証していきたいと思っています。3